死にたい、ですか@村上しいこ

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司法研修所で同期同クラスの友人が薦めてた書籍を読了。

死にたい、ですか@村上しいこ

色々とかんがえさせられました。

 

舞台は三重県。ある男子高校生の自殺。

いじめによる自死遺族の苦悩と残された家族の壊れていく様がリアルに書かれています。

ある日突然、自分の息子が、自分の娘が、自分の父親が、自分の母親が、

自分のお姉ちゃんが、自分のお兄ちゃんが、自分の弟が、自分の妹が、

自死でいなくなったら、残された人は、どうなるのだろうか。

どういう気持ちなのだろうか。

弁護士として、企業側の労働弁護士として、従業員の方の自死に対応することがあります。

そういったときには、いつも、残された家族の気持ちはどういうものなのだろうかということを自分なりに想像します。

少なくとも、この書籍を読んでいて、家族の1人が亡くなることによって、

それまで築き上げてきたものが、砂上の楼閣のように崩れ去っていく

っていうのはこういうことなんだろうな、とリアルに想像できました。

本当にリアルに書かれています。

息子が亡くなることで、壊れゆく両親。

父親は酒に。母親は亡くなった息子の写真、動画に。

 

そして、この小説の舞台の1つは法廷での証人尋問。

とてもリアルに描かれていて、読みながら、目の前に実像が浮かぶよう。

裁判って何なんだろう?と考えさせられる一幕も。

小説では、いじめをしていた生徒、それから担任の先生の証人尋問があり、

最後に、自殺した男子高校生の妹が証人として出廷します。

印象に残った部分を抜粋。

代理人:お兄さんが亡くなってから、何か感じたり、考えたりしたことはありましたか?

証 人:感じたり・・・。何を食べても味がしないし、おいしくないし、食欲が一切なくなりました。呑み込むという行為がおっくうになりました。テレビを見ても面白くなくて、もうテレビはずっと見ていません。考えたことは・・・。やっぱり、何で死んじゃったのかなって。今までここで証言してきた人たちも、きっとみんなそうだと思うし、もちろん両親も同じだと思います。

代理人:何で死んじゃったのかなってこと?

証 人:はい。その解答欄を埋めたくても、やっぱり、何で死んじゃったのかなって、問いしか残らないんです。解答欄は、ずっと空欄のまま。

代理人:その空欄を埋める言葉はありませんか?

証 人:それは・・・たぶん、ありがとうだと思います。でも、まだ誰も、ありがとうって、亡くなった兄に言うことはできずにいます。だからこそ、ありがとうっていえるような家族になって、兄に見てもらいたいと思っています。今の人見家にはありがとうどころか、お互いを思いやる気持ちすらありません。お互いを見ようともしません。でもそれは、これから先もずっとそうだとは思っていません。きっといつか・・・きっといつか・・・

 

作者の方は、いじめや虐待を受けてこられたとのこと。

だからこそ、こういったリアルな話も書けるんだろうなと。

また、作者の方が、どうしてこの本を書こうと思ったのか、その点も以下で紹介されていました。

https://www.bookbang.jp/review/article/558814